ずんのブログ

新潟県関連、趣味やお店情報、そして雑感

【書評】精神科は今日も、やりたい放題 医者が教える、過激ながらも大切な話/内海聡

昨日、メンタルヘルスに関係し、会社での出来事と感想を綴ったエントリーを投稿しました。そんなぼんやりとした問題意識を抱えながら本屋をぶらついていたところ、面白い?タイトルの本が平積みされていたので、何かの参考になればと思い、手に取ってみました。

タイトルの通り、精神科の現状に警鐘を鳴らす内容で、終始「精神科不要論」、いかに精神科での診断、治療が怪しいものかが書かれています。現役の医師で、医療業界から強烈なバッシングが来ることは目に見えているのに、このような内容の書籍を出版する勇気がまずすごいと思います。

最初に手に取ったのがこの本だったので、偏った見方もあるかもしれませんが、日常気になっていることも含めて、内容を紹介させていただきます。

 

 

・そもそも、精神的に病気じゃないかor病気かってどうやって判断するのか?

恐ろしい話ですが、本書によると「担当医師の主観」だそうで、人により判断が異なることもざらにあるのだとか。というのも、精神的な病気というのは、他の疾病とは異なり、何かしらの数値(閾値)でジャッジできるものではないということが背景にあります。血圧が〇〇以上であれば高血圧、ウエストが〇〇以上であればメタボ、であれば、誰がどう測定しようが同じ診断結果となりますし、科学的に言えば再現性も有り、ということになります。

一方で精神的的な病気(本書を読むと、病気と表現するのもはばかられますが・・)というのは、何か数値でジャッジができるもので有りません。一時期、脳内ホルモンの分泌が関連しているのでは?というような仮説が発表され、今も議論が続いているそうですが、結論に至っていないとのことです。となると、医師の判定には自動的に「主観」が入ることになります。

何も考えなければ、主観が入ること自体が悪、というわけではないでしょうが(スポーツだって芸術だって、ジャッジする人がいればそうなることは致し方ないと思いますし)その判断に主観が入るか否か?が将来的に患者、医師、家族、社会にどのような影響を及ぼすかは、冷静に見る必要があります。

 

ADHD発達障害、不安障害、うつ病と最近いろんな病名を聞くけど、それぞれどんなものなの?

例えばADHD。なんか落ち着きがなく、常に動き回り片付けができない子供、というイメージがありますよね。詳しい説明は専門書に譲るとして・・とあるアメリカの精神科医の発言が衝撃的です。

「昔はADHDなんて言葉は使わなかった。子どもって言ってたんだよ」

本書を読んでいただければわかりますが、精神的な病気を判断する際の各因子というのは、1〜0(黒〜白)のグラデーション的に濃淡があり、どれくらい濃い・薄いかという話。例えば、不安障害に対しても、家の鍵をかけ忘れたか不安になるなんて人は自分も含めて皆一度や二度は経験がありますよね?そんな中で、毎回そう感じてしまう、1度の確認だとまだ不安がぬぐいきれずに生活に支障をきたすくらいに何度も何度も確認してしまう、となると1(黒)に限りないところにプロットされる。で、そのプロットされた点が医師の主観(閾値)を超えていれば、めでたく病気と診断される、こんな仕組みだとのこと。

ちなみに、本書にはADHDのチェックリストも収められていますが・・その内容が

「聞き漏らしがある」「言葉に詰まったりする」なども含まれていて、こんなの大人でも当てはまる人いっぱいいるやんけ・・・という内容になっております。

 

ハッとさせられたのが、精神科という場所が、医師、患者、患者の家族、学会にとって「悪の温床になっているのではないか」という指摘。

今、自分の勤務している会社でも「メンタルを病む」ことが一種の隠れ蓑になっている部分があります。うつ病と一度診断されると、ある程度の期間休んでも給料がもらえ、かつ仕事の内容もハードでプレッシャーの大きいものには携わらなくなる、かつ毎日定時退社という恩恵にも与れる。

となると、楽をしたいと考える人がいれば、「なんとかうつ病と診断してもらえないか」ということを考えるわけです。

で、次は病院サイド。気持ちが沈みがちで、仕事が手につかなくて・・という患者さんが来たとして、うつ病と診断し、かつ薬を処方する。そうすると、自分の稼ぎにもなるし、かつ広範囲で考えると、製薬会社にもメリットになる。患者、医者、製薬会社の3者に限ると、全員がメリットを享受できるわけです。患者としては仕事が楽になる、医者、製薬会社としてはお金が手に入る。

本当に一生懸命治療をしようという信念を持った医者、大変な思いをして日々生活している患者さんがおられることは十分周知の上です。気分を害されたら申し訳ありませんが、そういう可能性も否定できない。

特に精神科は薬の量と種類が膨大で、大きなお金を生み出す温床になりかねない、というわけです。

 

さらに怖いのが、投薬のスパイラルが待っていること。

上述の通り、精神的な病というのは、ある因子の「振幅」が大きいか否かによるわけで、薬でその振幅を抑えるという対症療法が主になります。で、薬をたくさん飲むとその目的は達成できますが、逆に無気力になる部分も出てくる。となると、さらに薬を投与し、無気力を解消しようとし・・と、少し隙間があれば薬で埋めていく、そんな可能性も懸念されるわけです。

 

本書自体、アンチの立場から書かれているので公平な議論・ジャッジをするにはもう少し肯定派の意見や、診断の仕組みについて理解を深める必要がありますが、問題意識を醸成するにはもってこいの入門書でございました。