ずんのブログ

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【書評】大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと。

現マラソン日本記録(2時間5分50秒)保持者、大迫傑の自叙伝&マラソンに対する考え方を綴ったもの。

自分もマラソン好き、オレゴンプロジェクトにも興味があって時々youtubeで大迫選手をこっそり(?)追っていた自分としては読まないわけにはいきません。ということで、書店で発見するなりレジに直行。薄めの本ですが、一気に読めました。

なんとも表現しがたいのですが、スポーツでもなんでも「道」を極めた人、極めつつある人の書くものは言葉の密度が高い印象があります。野球の野村監督、落合、イチロー選手など、決して饒舌に語るようなタイプではないですが、少ない言葉ですっと言いたいことが理解できる。それでいて、一言の持つ意味の「量」が多い。うまく表現できないのですが、そんな感じ。

本書も、読了後に似た印象を持ちました。決して長ったらしくなく、余計な装飾語がない。でも、言いたいことがシンプルに伝わる。何かを極める人は余計なことに時間を使わない、ある意味生活のスタイルからしてシンプルになっていくことも、表現に現れているのでしょうか。

 

走って、悩んで、見つけたこと。

走って、悩んで、見つけたこと。

 

 

以下、面白いなと思った部分を抜粋します。

p32:練習をしていると「きつい」と感じることがあると思います。ちょっと変だと思うかも知れませんが、僕はそんなとき頭と体を別々に考えるようにしています。きついと感じているのは脳であって、身体ではない。だから身体には出さないようにと意識する。表情ひとつ取っても、顔はなるべくリラックスした状態をキープして、思考と身体を切り離す。そうすると単純に力みがなくなって、努力値で少しタイムが良くなったりするんです。きついという感覚はすごく主観的なもので、冷静に考えて、そのきつさを分析すると意外と対応できるものです。「今きついのはどこ?呼吸?脚?脚のどこ?」そう問いかけると、身体全体がきついわけではないと気づくので、少し楽になるんです。

p75:1本1本、一瞬一瞬が大事。例えば、練習で200mを20本走るとします。このとき20本を走ると考えるのではなく、この1本、この200mをどう走るのかということを考えて、それを20回積み重ねる。このとき、1本1本のきつさがどこからくるものなのか、きつさを分割していくことも重視しています。足がきついなら、足のどこがきついのか、さらにその部分のどこがきついのか、それは我慢できるきつさなのかと掘り下げていく。全てをただ”きつい”を一緒くたにしてしまうと、フォームが乱れてしまったり、本当は足がきついのに呼吸が辛いと思い込んでしまったり、我慢できないきつさだと感じてしまいがちです。〜連取においても、きつさにおいても”今”に集中して考えるということは、レースにおいてももすごく重要になってきます。

p125:僕は基本的に自分に対しても誰かに対しても言い訳をすることが嫌いです。言い訳をして良くなるということは絶対にないと確信しているからです。

そのほかにも1番に対するこだわり(下駄箱の番号、練習に来る順番など全て)なども興味が惹かれる部分多々。

3つ目の言い訳に対する考え方など、分野は違えど渡部昇一さんの「知的生活の方法」に書かれていたインテレクチュアルオネスティと相通ずるものがありますよね。どの分野でも、成功したり実力を身につける人は、自分に正直であり、逃げ道を作らず受け止める。

ラソン好きに限らず、社会人や何かを目標にして頑張るお子様達にもぜひ読んでもらいたい作品です。