ずんのブログ

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【書評】桶川ストーカー殺人事件

1999年、自分が中学生頃に起きた事件。

今はストーカー行為はきちんと処罰の対象になっているが、当時はストーカー行為を具体的に取り締まる法体制の整備ができていなかった。その体制が整備されるにあたっての「原動力」ともなった事件と言える。

阪神大震災を契機に耐震基準が見直されり、人間って広いくくりで見ると、痛い目を見ないと気付けない・動かない生き物(批判、ではなく)なんだなとつくづく思ってしまう。

本書は、ノンフィクションライターの最相葉月さんの著書で紹介されていて、彼女の書評の中身を見たら気になったので、実際に購入して読んでみたものです。ノンフィクションの底力を見せつけられるような作品でした。最近、ここまで一つの作品にのめり込んで一気に読了したのはなかったので、新鮮な体験だっことも付け加えておきます。

 

著者の清水潔さんは、今は廃刊となってしまった”三流雑誌”FOCUSの記者。ひょんなことから同事件の担当になったものの、取材を続けていくうちに、報道と被害者・猪野詩織さんの周囲の方々とのコメントの齟齬に違和感を覚え始め、最終的には上尾警察署のスキャンダル(というか対応の酷さ)を告発するに至ります。

被害者遺族のコメントや詩織さんの周囲のかたがたとの取材のやり取り、清水さんの推察が作品の大部分を占めることもあり、被害者遺族側の視点になってしまうのは仕方ない部分があるのでしょうが・・それにしても、(当時の)上尾警察署の対応は酷すぎるし、胸糞が悪くなるとはまさにこのこと、という感じです。

詩織さん含め家族が必死の思いで訴えに来たにも関わらず、全然取り合わない、挙げ句の果てには書類を改ざんしたり、自分たちが面倒に巻き込まれないようにするためだけに、告訴の取り下げを要求してきたり・・・結果論だし、面倒に巻き込まれたくないという気持ちは全く理解できない、とは言いませんが、それにしても、当時の対応、さらにその後の隠蔽・改ざんの対応等、目に余ります。

一生懸命になって使命を全うしている警察官に対しても非常に失礼じゃないかと思うほどです。

 

同事件に興味がある方はもちろん、ノンフィクションの底力を感じられる作品でした。 

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)