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【書評】走ることについて語るときに僕の語ること 村上春樹

最近は特に、エッセイや小説の類を読むことがめっきり少なくなりましたが、その数少ない中でも時々読み返す1冊。

ノルウェイの森を始め、ハルキストなんて言葉まで生み出した著者は、小説家だけでなくマラソンランナーとしての一面も持っています。しかも、1回くらいフルマラソン完走しました!と言うレベルではなく、何十年にもわたり、毎年フルマラソンに出場していたり、さらにはウルトラマラソントライアスロンまで挑戦しているようです。

そんな彼が、マラソンを含めた「走ること」に関して書いたエッセイをまとめたのが本書。ランナーにとっては、読んでて「あるある」がたくさん出てきて共感でき、さらに、走るときになんとなく感じていたことや、周りからの問いに対する思いみたいなものが、巧みに言語化されていて、読んでいて気持ちの良い一冊です。

ランナーのモチベシーションアップにもつながる一冊。今回は、そんな中でも心に止まった一節をご紹介。

 

”走り始めて以来ずっと、レース中に頭の中で反芻していると言うランナーがいた。Pain isinevitable. Suffering is optional. それが彼のマントラだった。(中略)「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」ということになる。「例えば走っていて「ああ、きつい、もう駄目だ」と思ったとして、「きつい」というのは避けようのない事実あが、「もう駄目」かどうかはあくまで本人の裁量に委ねられていることである。この言葉は、マラソンという競技のいちばん大事な部分を簡潔に要約していると思う。”

 

”30kmまでは「今回は良いタイムが出るかもな」と思うのだが、35kmを過ぎると体は燃料が尽きてきて、いろんな物事に対して腹が立ち始める。そして最後は「からっぽのガソリンタンクを抱えて走り続ける自動車みたいな気分」になる。でも走り終えて少し経つと、苦しかったことや、情けない思いをしたことなんてけろっと忘れて「次はもっとうまく走るぞ」と決意を固めている。いくら経験を積んだところで、年齢を重ねたところで。所詮は同じことの繰り返しなのだ。”

 

”長生きをしたいと思って走っている人は、実際にはそれほどいないのではないか。むしろ「たとえ長く生きなくてもいいから、少なくとも生きているうちは十全な人zせいを送りたい」と思って走っている人の方が、数としてはずっと多いのではないかという気がする。同じ十年でも、ぼんやりと生きる十年よりは、しっかりと目的を持って、生き生きと生きる十年の方が当然のことながら遥かに好ましいし、走ることは確実にそれを助けてくれると僕は考えている。”

 

おそらく、ランナーの方の大半は、勢いよく申し込んだフルマラソンの大会中に「なんで申し込んだんだ、過去の自分!」と思ったことは、他人から「走るのの何が楽しいんですか?苦しいだけだと思うんですけど・・・」という質問の答えに窮したことが、何度かあるのではないでしょうか。

なんか、自分の答えと100%は合致していなくても、多くの人は村上さんに似た思いを抱いているのかなと。

特にランナーの方にオススメ!

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